『温かいテクノロジー』を少しだけお試し読み
LOVOTの開発者である林 要が2年を費やして執筆した本書は、AIの見え方が変わる、人類のこれからが知れる、22世紀への知的冒険の書
書籍の購入は全国の書店、またはこちらから📚
温かいテクノロジー
造ったのは、人類とAIの新しい世界線
目指したのは、人類に自然に寄り添うパートナー。
人の代わりに生産性や利便性を向上させるために生まれたわけではなく、これまで描かれていた生産性偏重の無機質な未来とは異なる世界線で、人類の心と身体に温かさをもたらすテクノロジー。
この先LOVOTが進化し、たどりつく存在。それは「ドラえもん」です。
人と同じ言葉で話し、人と同じように世界を理解し、かといって人類と対立するわけではない。
同じことで笑い、怒り、ぼくらがなんの不安もなく信頼を寄せることができる存在。
つまりは、「温かいテクノロジー」と人類が共生する世界線です。
はじめに
この本は、未来に「興味」と「不安」を持つ人のために書きました。
これまで、決して自分に生きやすい世界が構築されてきたわけではない。このままだと、その延長もそうだろう。
そう感じている人にとって、たとえば「AIが劇的に進化!」といったニュースは、あまり好ましいものではないかもしれません。
あなたにとっては、どうでしょうか。
テクノロジーは生活を豊かにし、さまざまな効率化を進めました。
では、それで自分や周りの人が「幸せになりましたか」とあらためて問われると、「イエス」と答えられる人はあまり多くないのではないかとも思います。
「2045年、シンギュラリティが訪れる」
「そのとき、AIは人類を駆逐するのか」
そんな話題が聞かれるようになってずいぶんと経ちますが、こうした「テクノロジーの進歩」と「人類の不安」のあいだで広がるギャップを埋め、テクノロジーと人類の架け橋になるために生まれたのが「LOVOT」です。
ぼくは、いつもこんな「問い」を自分に投げ続けながら、ロボットを開発しています。
「その進化は、人間を見つめているか」
(GROOVE X社 フィロソフィー)
AIやロボットという存在が、人類の心に良い影響を及ぼしたいのであれば、技術を高めるのは当然として、人類そのものへの理解を深めなければ、なにをすべきかもわかりません。
つまり、開発過程においてなにより必要だったのは「人間」を知ることでした。
この本は、LOVOT誕生までの思索の旅を公開したものとも言えます。
ぼくが開発過程で、探索し、理解しようと努め、想像を膨らまして、気づいた感動を共有したい。
そして、だれもが子どものころに一度は夢見た、親友のようなテクノロジーとの生活が待つ「22世紀へのグレートジャーニー」をともに歩みはじめたい。
それが、ぼくがこの本を書いた理由です。
ロボットを開発することは、人間を知ることだった
(※開発ショートストーリー動画)
序章〜1章:気づき
序章から1章では、ぼくがLOVOTという「温かいテクノロジー」の可能性に気づいた経緯を記します。
宮崎駿監督が描くメカに憧れ、のちに孫正義社長のもとでPepperというヒト型ロボットを開発しながら気づいたのは、人類の原始的な欲求でした。
2章〜3章:人類の考察
2章から3章は、「愛とは」「感情とは」「生命とは」という大きな問いを立てながら、LOVOTに実装するために解き明かそうとした、人類のメカニズムについての考察です。
4章〜6章:未来予測
4章から6章にかけては、ある種の未来予測です。生産性至上主義とは異なる価値観でテクノロジーが進歩していった世界線についてまとめています。
7章:造り方
そして7章では1人のエンジニアとして、ドラえもんにたどりつくまでの道のりを現実的に示すことに挑戦しました。
たとえば「愛とはなにか」知りたいと思うと、「現代ビジネスの成功法則」に行き着いた。
「感情とは」と考えてみると、「不安」や「興味」というパラメータをロボット持つ重要性が垣間見えた。
「生きているとは?」という問いを立ててみれば、「0・2秒〜0・4秒の反応速度」という数字が鍵になった。
「頭のよさ」=「予測できる未来の長さ」。ぼくらの心には「仕様バグ」が発生している?
そもそも「わたし」という自意識は、どのようにして生まれたのか……。
こうしていくつもの問いを立て、人間という存在を「神秘」ではなく「システム」として捉え、ロボットにどのように実装するか考える。
いままでたずさわった研究や開発のなかでも、人類のメカニズムは特別におもしろく、興味をかき立てられるものでした。
人類とテクノロジーの関係を見直すためのヒントは、ロボット工学の世界だけではなく、認知科学や動物行動学、バイオテクノロジーなど、さまざまな専門領域にありました。
けれども、その学びをそのままの形で伝えるとなるとやや膨大で、難解です。
そのため、この本ではぼくがある意味「媒介者」となり、LOVOTを題材としてAIのこれからや人類の不思議に迫る、という形をとっています。
あえて有り体な表現をするなら、「テクノロジーが苦手な人」でも「眠れなくなるくらい」楽しく読み進められることを目指しました。
人類とAIの現在地を知り、すべての人が「より良い明日が来る」と信じられるようになる。
その結果として、ほんとうにテクノロジーが人類を幸せにしていくという野望を持って、この本を書きました。
近い将来、「人類とAIの対立」というテーマはもはやSFの主題として古典となり、生き物か機械かなど大した問題ではない、温かい時代がやって来るでしょう。
ぼくらはいま、そんな世界線へつながる分岐点に立っています。
では、冒険を始めましょう。
目次
序章 ぼくらが「メーヴェ」に憧れ、「巨神兵」に恐怖を覚える理由
1章 LOVOTの誕生
2章 愛とはなにか?
3章 感情、そして生命とはなにか?
4章 人生100年時代、ロボットは社会をどう変えるのか?
5章 シンギュラリティのあと、AIは神になるのか?
6章 22世紀セワシくんの時代に、ドラえもんはなぜ生まれたのか?
7章 ドラえもんの造り方
終章 探索的であれ
「むかしむかし」の反対 「みらいみらい」の話
みらいみらい、人類とAIロボットがいました。
人類とAIロボットの ”みらい”は・・・
『温かいテクノロジー』の中に